異国の地で撮影に挑む
「アジアの天使」は、妻を病気で亡くした剛(池松壮亮)が、韓国に住む兄の学(オダギリジョー)から「韓国で仕事がある」と聞き、8歳になるひとり息子を連れて兄の元へ渡って行くところから物語が始まる。剛の想像と違い、兄は怪しい商売を手掛けていて、剛はその仕事を手伝うことになるが、それも早々に失敗。どん底に落ちた3人は、活路を求めてソウルから江原道(カンウォンド)へ向かう列車に飛び乗る。偶然そこで巡り合ったのは、資本主義社会に弾かれた韓国の三兄妹だった。2つの家族は共に運命を歩んでいく。
異国の地で撮影に挑んだ池松は、言葉と文化の壁から生まれる噛み合わない会話やコミュニケーションのすれ違いについて、「そういう実感を持つための旅でもありました。外国だから普段より言葉を尽くさないと伝わっていないような気がして普段よりたくさんしゃべりました(笑)。僕が演じる剛は小説家ですが、言葉を超越するために韓国に行き、言葉を生業(なりわい)としているような歌手に出会い、お互いに自由になり共存するための道を選んだんです」と述懐する。
そんな池松の役作りは、「あの…白状しますけど、実は以前からダスティン・ホフマンを意識しているところがあるんです。特に石井映画では。石井監督もダスティン・ホフマンが大好きで、よく作品づくりのキーワードとして飛び交います。ダスティン・ホフマンって、ちょっと天使ですよね(笑)。あとはアル・パチーノなんかも」と、ちょっぴり恥ずかしそうに意外な告白をした。