――劇団ひとりさんが監督される「浅草キッド」への出演が決まった時の気持ちは?
大泉:以前、ひとりさんが原作・監督の映画「青天の霹靂」(2014年)に出させてもらって、今回はこの「浅草キッド」に。脚本を読ませてもらった時に思ったのは、ひとりさんは昭和のこの時代を描くのが上手だなってことでした。僕自身、たけしさんが好きですし、昭和の芸人さんを恐らく他の方よりもたくさん見てきたと思っています。子どもの頃からお笑いばかり見てきた人間ですからね。そんな僕にしてみたら、「浅草キッド」の世界観はすごく好きなので、出演できてうれしいです。
柳楽:僕も、この時代のファッションとか髪形とか、全部かわいくてオシャレだなっていう印象があって好きです。“タケシ”を演じるためにタップダンスを習ったり、たけしさんのモノマネの練習を松村邦洋さんにしてもらったり、技術的な練習の量がかなり多かったです。作品自体は“師弟愛”というか、人間のつながりが描かれている作品で、僕自身も好きなタイプのものなので気合を入れて臨みました。
ひとり:たけしさんと深見師匠の師弟の絆、これになるべく重きを置きつつ、麻里(鈴木保奈美)や千春(門脇麦)といった周りの人間関係もなるべく深く描きたいなと思いました。我ながら本当に見事な脚本だなって思いました!
大泉:自分で言っちゃったよ(笑)。僕も「いい脚本だ」ってずっと言ってきてるけど。
ひとり:でも、今日はなかなか出てこなかったから(笑)。
――セリフも印象的なフレーズが多くて、本当に素晴らしい脚本だと思いました。
ひとり:ありがとうございます!!
――最初に原作を読まれたのが中学の頃だったと聞きましたが、今、この作品を映像化しようと思ったきっかけは?
ひとり:きっかけも何も、「これは僕がやりたい」と思ったからという理由しかなくて。僕がやる理由も、今やる理由もないんですけどね(笑)。でも、映像化するなら自分がやりたいと思っていましたし、他の人に取られるのだけは絶対に納得できないというか、そうなったら悔やんでも悔やみきれないと思ったんです。
――中学生の時に読んだ時の印象やインパクトも今回の脚本や映像に投影されたのでしょうか?
ひとり:そのころに思いついたわけではないんですけど、読んだ時に印象に残った“浅草の芸人たちの泥臭い世界観”や“カッコ悪いことがカッコいいという美学”はふんだんに織り交ぜています。
大泉「僕ら役者からするとゾッとするぐらいの難しさ」
――大泉さんが師匠の深見千三郎、柳楽さんがたけしさんを演じられましたが、お互いの役の印象と魅力的だと思うところを教えてください。
大泉:柳楽君が演じた“たけしさん”の役は、僕ら役者からするとゾッとするぐらいの難しさがあるわけですよ。誰もが知る人を役者として演じる。モノマネで終わるわけにはいかないですから。「モノマネがキツかったね」って言われるのが一番怖いですし、本当によろしくないから。とは言え、全く似てないのも、それはそれで見る人の期待を裏切ることになりますよね。「全然たけしさんじゃない!」って。
普通に柳楽君が演じるのもちょっと違う気がしますし、監督が描いた人間ドラマがあって、師匠との心のつながりを演じながらも、そこにたけしさんがいなければいけないわけです。体操で例えると、ウルトラD難度の技が何度も続く感じというか、フィギュアスケートで言うと4回転ジャンプが延々と続くというか、空手の型で言うと…。
ひとり:もういいわ! よくそんなに例えられますね。
柳楽:ハハハハ。
大泉:あぁ、よかった〜。そこでツッコまれなかったらどうしようかと思ってました。もうネタがなかったから、ホント、劇団ひとりは天才だな(笑)。とにかく、柳楽君は難しい役を見事に決めてくれました。
柳楽:ありがとうございます(笑)。
――モノマネにならないというのは、柳楽さんもかなり意識されましたか?
柳楽:そうですね。監督の演出に応えられるように、誠意をもって挑む。そういう気持ちで挑みましたので、自分から“こういうタケシにしよう”と思うんじゃなくて、監督の演出に応える感じで演じていきました。
ひとり:ずっとモノマネの稽古もしてもらってたんですけど、「やっぱりそれだとモノマネになってしまうなぁ」って思ったので、クランクイン直前に「モノマネはやめましょう」と伝えました。「魂の部分でたけしさんになってください」って。簡単に言うと、声色だけでたけしさんに寄せるのはやめましょうってことです。難しいお願いだったんですけど、柳楽さんはたけしさんの“孤独さ”みたいなものを目でしっかり表現してくれたので、寄りの映像が多くなりました。大泉さんもそうなんですけど、2人とも絶妙な表情がたまらないんです。
柳楽「大泉さんとご一緒できて最高の現場に」
――柳楽さんは、大泉さんが演じた深見師匠にどんな印象を受けましたか?
柳楽:技術とか芸を見せて生きていく難しさや面白さを師匠に教わるという状況に僕自身、すごく憧れているので、深見師匠は厳しい方だけど、そこに愛情があって、なんかカッコいいなって思いましたね。すごくいい関係だなって思いながら演じてました。実際、大泉さんから話すテンポとか現場で教わることも多かったので、師匠のような大泉さんとご一緒できて最高の現場になりました。
大泉:うれしいねぇ!
Happinet