1月は同時期に3作品“旅ドラマ”放送
テレビ東京だけではなく、他局でも旅を題材にしたドラマは制作・放送されている。前述の「鉄オタ道子、2万キロ」を合わせると、1月には3作の旅ドラマが放送されていたことになる。
12月から2月にかけてMBS/TBSで放送された「#居酒屋新幹線」は、日帰り出張で全国を飛び回っている高宮進(眞島秀和)が、出張先で見つけたご当地テイクアウトグルメを帰りの新幹線で堪能する作品。
出張先での様子とともに、新幹線内での食事風景が描かれ、“移動時間”も旅の醍醐味だったのだと思い出させてくれるドラマだった。
NHKBSで1月に4夜連続放送された「旅屋おかえり」は原田マハの同名小説を原作とするドラマ。(NHK総合では4月2日[土]夜10時より2話連続で放送)
売れないタレント、“おかえり”こと丘えりか(安藤サクラ)が旅の代行業を始め全国行脚するといった内容で、各地の美しい風景や名産品も登場。
同作公式サイトに「(前略)どんな美しい風景・新しい出会い、地元の名産が待っているのか、ゆったりと視聴者の皆さんと追体験する、ドキュメンタリータッチの新しい『旅ドラマ』です」とあり、まさしく旅気分を視聴者に味わってもらうためのドラマとして制作されたことが分かる。
“旅の疑似体験”がドラマならではのポイント
なぜ旅ドラマが増えているのか。それは、ドラマなら主人公の目線を通して、旅を“疑似体験”できるからだ。
バラエティ番組の定番フォーマットとして確立されている旅企画も楽しいものではあるが、どうしても出演タレントの旅行を第三者目線で見ている気持ちになってしまう。これは優劣ではなく、そもそものコンセプトが違っているためだ。
旅ドラマは、他ジャンルの作品――刑事ドラマや医療ドラマ、恋愛ドラマほどの波乱万丈な出来事は起きないし、バラエティのように爆笑するようなできごともない。
しかし、少し楽しく癒やされて、明日への活力になる。それこそが、視聴者にとっての“普通の旅”であり、“旅ドラマ”に求められているものではないだろうか。
実際、SNSでも前述の旅ドラマの視聴者から「癒やされた」「旅行欲が満たされた」などのコメントが寄せられており、ニーズと合致していることが分かる。
コロナ収束の見通しが立たず、“afterコロナ”ではなく“withコロナ”の時代になるとも言われている現在、旅ドラマは定番化していくジャンルかもしれない。