人気バンドsumikaの片岡健太が初エッセイ本「凡者の合奏」を6月下旬に発売した。音楽との出会い、挫折の繰り返し、人との出会いや別れ、声を失った原因不明の病など、ミュージシャンとしてだけでなく、一個人としての“片岡健太”の半生を振り返った本書は、sumikaファン、音楽ファンに限らず、読む人と“1体1”で向き合い、寄り添う1冊になっている。今回のインタビューでは、本書に込めた思い、そして書き上げたことで見えてきた思いなどを語ってもらった。
――まずは、ご自身の半生を綴るエッセイを書こうと思ったきっかけから聞かせてください。
きっかけは去年ですね。今回の表紙や巻頭の写真を撮ってくれた写真家のヤオタケシくんの紹介で,
編集者の方が提案してくださったんです。その方が「片岡さんの半生を書いていただけないでしょうか?」と提案してくださったのが始まりです。以前から漠然とではありますが、「いつか自分の半生みたいなものを振り返ることができたらいいな」と思っていたので、sumikaの結成10周年イヤーというタイミングでもありましたし、お声がけいただいたのも何かの縁だと思って書かせてもらいました。
――いいタイミングで、いい出会いがあって。
はい。「やりたい」とは思っていたんですが、音楽活動をしているとそれだけで手一杯になってしまって、気が付くと月日が経ってしまっているという感じでした。それに、音楽制作の経験はあっても本の制作の経験はありませんし、自分ひとりでは0から1にする作業はできなかったと思いますので、お声がけいただいたことは本当にありがたいなと感じています。
――このエッセイ本で伝えたかったことは?
特に伝えたいと思ったのは「いっぱい失敗してきた」ということです。バンドという屋号を抱えると、良いところも悪いところも、パーソナルな部分に関してはそこまで深く入り込まなくてもいいというか、言葉は悪いですが、表層的な部分で誤魔化せているのかもしれないなって思うんです。バンドで活動していると個人の失敗は見えづらくて、事務所やレーベルは“失敗してないように見せる”のが仕事だったりするので、一個人として「失敗もちゃんと大事なものだった」ということをアウトプットする機会がなかったんです。今回、過去のことを語る本だからそれができましたし、ちゃんとアウトプットしたことによって本当の等身大、身の丈が見えた感じもしています。
――序章的な「はじめに」で、“気づけば周りにいる人は「失敗したから出会えた人」ばかり”と書かれていますが、失敗を失敗で終わらせず、次に生かしてきたことが今に繋がってる感じですよね。
そうですね。声が出なくなって活動休止したのも、なんだかんだ7年ぐらい前だったりするので、その後でsumikaのことを知ってくれた人の方が圧倒的に多いんです。バンドを結成した2013年頃と比べると、“失敗”に対する風当たりが格段に強くなっているような気がして、“一度失敗するともう終わり”というか、“傷モノ”リスト入りしてしまってもう上がってこられない。そんな風潮になっているので、敢えてこのタイミングで「失敗があって今があります」とアウトプットしたいと思ったんです。sumikaを知らない方、僕が何をやっているのかを知らない方であっても、この本を手に取って読んでいただけたら、何らかプラスになる部分があるんじゃないかと思っています。
発売日:6月23日
定価:2090円(税込)
版型:A5版/320P
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322111000858/
■片岡健太
神奈川県川崎市出身。荒井智之(Dr./Cho.)、黒田隼之介(Gt./Cho.)、小川貴之(Key./Cho.)とともに構成される4人組バンドsumikaのボーカル&ギターで、すべての楽曲の作詞を担当。キャッチーなメロディーと、人々に寄り添った歌詞が多くの共感を呼んでいる。これまで発売した3枚のフルアルバム「Familia」(17年)、「Chime」(19年)、「AMUSIC」(21年)はすべてオリコンチャート入り。ツアーでは日本武道館、横浜アリーナ、大阪城ホールなどの公演を完売させる、今最も目が離せないバンド。
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