柳楽との共演で「とても勉強になりました」
――大悟役の柳楽さんと共演された印象は?
柳楽さんは、撮影に集中して、一瞬でパワーを発揮される方なんだろうなという印象があったんですけど、実際に現場でも感じたことは、普段、自分に“フタ”をしている方だからこそ、お芝居の時に爆発させられるんじゃないかって思ったんです。
撮影の合間は丁寧にお話をされたり、笑顔も多い方なんですけど、今まで俳優という仕事をしてきた中で培われた“フタ”をしているんじゃないかって。僕の印象なのでそれが本当かは分かりませんが、一緒にお芝居をさせてもらって楽しかったですし、とても勉強になりました。
――今回は対立する役でもありましたし。
それもあるかもしれないです。僕が柳楽さんと一緒にお芝居をしている時って、銃を向けているか、頭からお酒をかけてるか、引きずっているか、そんな感じなので(笑)。
――人間の狂気を描いたサイコスリラー作品ということで、人間関係の怖さ、グロテスクな描写の怖さなど、いろんな怖い要素がありますが、笠松さんはこの作品の中で何が「怖い」と思いましたか?
僕自身が怖いと感じたのは、みんな撮影が好き過ぎることです(笑)。
――そうなんですか?
“好きこそ物の上手なれ”という言葉がありますけど、片山監督もそうだし、いろんな部署のプロフェッショナルな皆さんが撮影、好き過ぎるんです。これ、すごく怖いんですよ! 撮影が何時間押しても、監督が「もう一回!」って言うと「オイッス!」みたいな感じで(笑)。“え? 時間が押してるのを気にしてるのは僕だけ?”みたいなことがよくありました。
後藤家の人たちが自分たちを守るのは“愛”ですし、柳楽さんが演じられている大悟も“愛”をもって家族を守っているわけですよね。そういう意味でも、“好き”っていうのは怖いなと思いました。
――撮影といえば、一つのシーンを撮るために何百キロも移動したと聞きました。大変ですね…。
4時間かけて現場に行って、メイクが終わったタイミングで、「天気が違う」とその日の撮影がなくなったことがあるんです。監督が「今日じゃないよね」とバッサリで、そのこだわりが怖かった(笑)。
――そのこだわりが作品に表れていると思います。
そう感じてもらえたのなら、帰りのサービスエリアで食べたアイスの味もいい思い出になります(笑)。
2022年は「応援してくださる方の力を特に感じた年でした」
――「ガンニバル」は2022年の年末に配信がスタートしたわけですが、振り返ってみて、2022年はどんな年でしたか?
今まで、僕はあまり知られていないだろうなと思っていたんですけど、意外と見ていただけているんだなってことに気付きました。応援してくださる方の力を特に感じた年でしたね。ありがたかったです。見てくださる人がいるということに気付けたことで、失礼なものを作ってはいけないなってより強く思うようになりました。
――そして2023年は「ガンニバル」から始まったわけですが、どんな年にしたいですか?
“自分ができることって何だろう”って考えた時に、今まで以上にプラスアルファできることは“より多くの方に見ていただく”しかないと思ったんです。僕にとって“いい作品を作る”というのは当たり前のことだと思っています。
僕がやるべきことの一つに、見てくださる人の期待を裏切らず、僕に興味持ってくれた人を絶対に逃さないお芝居をするということです。これは本当に重要なことだと思うので、この「ガンニバル」で一人でも多くの方に興味を持っていただけたらいいなと思っています。
◆取材・文=田中隆信