“舞台となった場所”にこだわりを持って撮る
──今作で、映像作品だからこそできたことや映像作品としてこだわった部分があれば教えてください。
撮影した劇場はクラブeXという品川にある劇場なのですが、品川って今、改造中で、壊れていっているんですよ。駅前のマクドナルドもなくなったし、アンナミラーズもなくなったし。自分の中では、そんな品川の栄枯盛衰と壊れゆく劇団SEVENがすごく重なったんです。そのメッセージ性をちょっとでも入れられたらと思って、合間に入っているパワーショベルの映像や品川プリンスホテルに向かって飛んでいく飛行機の映像を入れました。そこは映像ならではの面白さかな。
──監督が受け取ったメッセージを映像として入れるというのは、毎作品やるようにしていることなのでしょうか?
もちろん入れられる余力があればですけど、特に“舞台となった場所がどこか”ということにはこだわりを持って作っていますね。「BECK」(2010年)を作ったときも、漫画を読んで「ここは横須賀だな」と思って、横須賀で撮影しましたし。モンタージュして作っていくことは簡単なんだけど、引きの絵として街並みも欲しいと思うと、どの街かというのは重要になってくる。リアリティを足すことによって「この劇場通ってたよね」と観客とリンクするのも面白いですしね。
映画を作り続けるのは「気持ちよく死ぬため」
──先ほど「演劇が人の心を危うくするのはリアルだ」というお話もありましたが、実際に演劇作品も手がけられている堤監督が、劇団をモチーフに作品を作るというのはいかがでしたか?
めちゃくちゃ面白いですね。たとえどんなに大きなプロジェクトであっても、アンサンブルと呼ばれる人たちはバイトをしながら、「いつか役名がある役に」と頑張っていて。そのしがみつく気持ちはすごく理解できるし、僕もそういう気持ちが監督になるための原動力になっていたところもあるし。劇団にはそういう青春の悲哀みたいなものがぎゅっと詰まっているんですよ。しかも今回は、劇団の“売れた後”を描くところに、さらに面白みがあって。劇団SEVENは劇団として成功して、それぞれが活躍しながらも本公演は大事にしている、だけど初期衝動みたいなものは失われていっているという状態で。それはすごく人間的だし、日本的だし、劇団だけじゃなくて、バンドや会社にも通ずる話。そういった悲哀から人間を表現できる、とても好きなテーマでした。
──それこそ、堤監督は監督としてのキャリアも長く、今は初期衝動とは違うモチベーションで活動されていると思いますが、今もまだ映画や舞台を作り続けていられる原動力は何ですか?
気持ちよく死ぬため。もう67歳ですからね。そろそろ遺作の準備に入らないと。そのために「これで最後でいいんじゃないか」と思える作品と出会えたらと思うし、そのためにいい役者と出会っていきたい。そう思いながら、作品を作っています。
■取材・文/小林千絵
撮影/WEBザテレビジョン編集部
スタイリング/関恵美子
「ゲネプロ★7」
2023年4月21日(金)全国公開公式サイト
https://gaga.ne.jp/gene7movie/
公式Twitter
https://twitter.com/Gene7movie