ここからの展開は、スリラーというよりサスペンスだ。サニョンとヘサンはやがて、かつて存在した「チャンジン里」という集落で半世紀以上前に行われた恐ろしい災厄払いの儀式にたどり着く。この時、村のために犠牲になったイ・モクタンという少女が悪鬼の正体だという。
その後、悪鬼が引き起こしたと思われる死亡事件は2023年までに17件。その17件を、サニョンたちは民俗学の視点から、若手刑事ホンセ(ホン・ギョン)とベテラン刑事ムンチュン(キム・ウォネ)のコンビは捜査資料から科学的にだとっていく。
霊のしわざとして追うサニョンたちも、捜査資料からたどるホンセたちも、行き着くのは同じ事件だ。8話までかけてバラバラのピースがうまくはまっていくかのように、張り巡らされた緻密な導線が一つ一つ“発見”されていく。恐怖だけでなく謎解きのスリルとスピード感も味わえるのは、サスペンスの名手キム・ウニ作品ならではだ。
ちりばめられた人間ドラマに涙…
さらに、人間ドラマもしっかり盛り込まれている。霊となってまで妹を救おうとする少年や、客鬼であると知りながら亡くなった娘の霊を引き入れる村人など、死の裏側に込められた愛情が涙を誘う。大ゲンカしながらも関係を深めていくホンセとムンチュンの絆や、ヘサンの子ども時代にまでさかのぼるムンチュンとの関係性にも胸打たれる。
そんな中、サニョンとヘサンの関係性も少しずつ変わっていく。共に悪鬼を追ってきた2人だが、いつしかサニョンは悪鬼から「話せばそいつ(ヘサン)も死ぬ」と脅され、ヘサンに言えないことが増えていく。
一方、9話以降サニョンの感情が悪鬼に乗っ取られる時間が長くなるにつれ、ヘサンはサニョンに不信感を募らせていく。「あの人は悪鬼か、サニョンさんか。今まで聞いた話は、真実かウソか――」。2人が協力しなければ悪鬼の正体を暴くことはできないが、母を殺した悪鬼を憎むヘサンにはサニョンの言葉を素直に信じることができない。それほどまでに自然に“サニョン”と“悪鬼”の2役を演じ分けるキム・テリの演技は圧巻だ。
TCエンタテインメント