鵜久森のためにも“向き合う”覚悟を決めた
警察の見解は、事故もしくは自ら命を絶ったということだが、美雪は納得していない様子。「先生、なんであの子はこういうことになったのでしょうか?」と問いかけられた九条は答えることができなかった。
帰宅後、夫の蓮に「やっぱり運命って変えられないのかな」と話すと、「思考回数1回の出来事は結論にはならない」という言葉が返ってきた。「先輩によく言われるんだよ。たった1回そうなったことで結論にするな。だから、これを運命だと結論付けちゃダメだ」と。そして、「里奈の生きる未来のためなら“何でもする”から」と、これまで幾度も九条が口にしてきた“何でもする”を使って、九条を勇気付けた。
それをきっかけに九条は気持ちを切り替え、喉を通らなかった食事も摂ることができ、“向き合う”ことを覚悟した。そして「私は誰かが犯したその罪を、絶対に許さない!」と力強く宣言。
大人が見ている表面的な世界だけで結論をつけるべきではない
10月10日、休校が明け、生徒たちが学校に戻ってきた。我修院教頭(荒川良々)が教師たちに「この件は、事故、もしくは自らが選んで起こした出来事」という学校側の見解を伝えたが、九条は鵜久森宅を訪れて、美雪に「なぜこんなことになってしまったのか。その理由と、そのためなら私は何でもしますので」と話した。大好きだったきんぴらごぼうを食べるはずだったということと、今もまだ冷蔵庫に残っていると聞かされた九条は、美雪の気持ちを汲み取り、「はい」と力強く返事をした。
教師たちが集まっている職員室に入っていった九条は、教頭に「知りたがってました。何でこんなことになったのか、その理由を」と伝え、パソコンを取り出し、監視カメラで撮った4月の教室でのいじめの様子を教師全員に見せた。
鵜久森は自分で変えようとしていたことを話し、「大人が見ている表面的な世界だけで結論をつけるべきではないと知ってもらいたい。彼女の身に何が起きたのか、それを知るために私たちは何でもしなければならない」という思いも伝えた。
誰一人関係ないとは言わせない
九条は、3年D組の生徒たちに「鵜久森さんはずっと生きることを誰よりも強く、大切に思っていました。単なる事故や彼女の責任にしてはいけない。理由がある。私たちはその理由と向き合わなければいけない。誰一人関係ないとは言わせない。ここにいる皆さんは一度彼女を傷つけることに参加したことのある一人です」と、自身の考えを洗いざらい伝えた。
そして、このホームルームを監視カメラを通して全教員が見ていること、4月の学級裁判の映像を見せたことも明かした。動揺する生徒たちに「向き合うとはそういうことだからです」と話し、これは3Dの生徒たちを吊し上げるためではなく「大人たちに見せつけるため」だと説明をした。
生徒たちが真剣に向き合う姿を見せることで、教師たちも真剣に向き合わざるをえない状況を作る。生徒はそれぞれの思いや考えをぶつけ合い、クラスとしての考えを出した。
「先生かっこいい」って生徒たちに言われたかったんです
教頭が電話で今回の件に関して校長に報告をしている。電話を切った後、いら立ちを隠せず、テーブルを思い切りたたく姿が見られた。“事なかれ主義”のように思われる教頭にとって、校長不在時にこのような出来事が起こったことへのいら立ちかと思われたが、そうではなかった。
教頭がいら立ったのは、“事故、もしくは自らの意思で”という警察の判断に対して「渡りに船」という言葉が校長から発せられたことが理由だった。
カメラ越しに見た3Dのホームルームを見て「響きました」という教頭。「私がなんで教師になったのか。『先生かっこいい』って生徒たちに言われたかったんです。ただそれだけだったんです」と初心を思い出したことを伝えた。そして他の教師たちにも意識の変化が生じた。「教師なんだ。もう逃げることはできないんだ」と。
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