台湾の映画監督、ギデンズ・コー氏が、10月13日に東京・ユナイテッド・シネマアクアシティお台場で開催された「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」のオープニングイベントに登壇した。
ここにいること自体がファンタジックです
台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)による「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」では、”心に刺さる1本が、台湾にはある。”のキャッチコピーのもと、台湾映画・ドラマにおいて人気の「ホラー」「BL」「ロマンス」、さらに「新鋭監督の長編デビュー作」の4つのジャンルから今最も熱いエンタメを発信する台湾の人気作品12本を無料上映する。
その初日となる13日、「赤い糸 輪廻のひみつ」(2023年12月公開予定)の上映前に、同作や「あの頃、君を追いかけた」を手掛けたギデンズ・コー監督によるトークショーが行われた。聞き手を務めたのは映画パーソナリティーの伊藤さとり。
ギデンズ・コー監督は「これまでに4つの作品を撮ってきましたが、『赤い糸 輪廻のひみつ』はその中で最も気に入っている作品なので皆さんに見ていただけるのが嬉しいです。今、5作品目を撮っているところですが、こうやって日本に呼んでいただけたのは光栄ですし(新作の制作の)励みになります。ここにいること自体がファンタジックです」と、上映作への思いとイベント参加の感謝の気持ちを伝えた。
日本の皆さんに受け入れられ、リメイクが作られることはとても喜ばしいこと
代表作「あの頃、君を追いかけた」は主演・山田裕貴、ヒロイン・齋藤飛鳥で日本でリメイクされている。その日本版について、「山田さんが演じている役柄がとても誠実で、日本版ならではの魅力を感じました。山田さんのように僕が若い頃カッコよかったら告白に成功していたかもしれません(笑)。」と話し、会場の雰囲気を和ませた。
自身の作品を含め、台湾映画が日本で多くリメイクされている状況について聞かれると、「僕は日本の作品などから多くの影響を受けましたので、自分が作品を制作する時には影響を与えてくれた作者や監督に敬意を表する気持ちで臨んでいます。僕以外の台湾の監督も同じ気持ちで作品づくりをしていると思うんです。なので、日本の皆さんに受け入れられ、リメイクが作られることはとても喜ばしいことだと思います」と、現状を好ましく思っていると回答。
この日上映された「赤い糸 輪廻のひみつ」も日本からの影響が感じられる表現がいくつか見られる。そういうことを受けて、「日本の名作からは価値観レベルで影響を受けていると思っています。例えば、漫画の『ONE PIECE』からすごく影響を受けました。主人公のルフィが海賊王になるということだけでなく、『この大海原で最も自由な人になる』というセリフにグッと来たんです。僕も映画の制作現場で『僕たちは必ず成し遂げられる!』という感じのセリフっぽい言葉で鼓舞するんですけど、そのレベルまで影響を受けています」と、日本の作品から受けた影響の深さを明かした。
影響を受けた日本の映画監督は「北野武」
そして、「みんなが一つになって何かを作る。そのみんなを集められる人物、リーダーになりたいと思っています」と、制作現場における自身の理想像も語った。
影響を受けた日本の映画監督を聞かれると「北野武」の名前を挙げ、「監督としても好きだし、役者として出演しているのも好きです。(深作欣二監督の)『バトル・ロワイヤル』は残酷な作品ですが、ヒューマニティとはどういうものなのかを考えさせられました」と回答。
最後に、「『赤い糸 輪廻のひみつ』を撮る前は死ぬのがすごく怖かった。でも、この作品を完成させてからは達観しました。なので皆さん、ぜひこの作品を観た後は、死生観にどこかユーモアをもって対峙していただければと思います」というメッセージで締め括った。
「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」は10月13日から28日(土)まで開催。
◆取材・文=田中隆信