宮藤官九郎のシナリオ本へのこだわり…「役者ってすごいんだな」と感じてもらえるはず
――本作の興収が良ければ次回作も、と水田さんはおっしゃっていましたが、もし続編をやるとしたら、どんな構想になりそうですか?
僕はやるんだったらやっぱり連続ドラマがやりたいんですよね。ちょっと物語が停滞するのが面白いと思うんで。2時間の映画だと、停滞しないで先に進めなきゃいけない。でも飲み屋で3人が喋ってるシーンの面白さって、停滞と迷走ですよね。寄り道して、先に進んでいないのに1時間楽しかった、考えさせられたっていう。自画自賛になっちゃうんですけど(連続ドラマの)第1話で、正和が山岸を叱責したあと、山岸が電車に飛び込んだと思って駆けつけて、2話で遺族の方に「すみません僕のせいです」って言っちゃったのが、実は全く他人だったけど、その他人(遺族の母・真野響子)との関係性がなんとなく続くっていう、それが「ゆとり-」ならではだと思うんですよね。あれができたのは連ドラだからだと思うんで…だから僕は連ドラがいいです(笑)
――今回もシナリオ本を出版されていますが、シナリオ本として楽しんでほしいところは?
映画を見たあとに「こういうト書きがあって、ああいう画になってるんだな」とか、木南さんにやっていただいたチェ・シネのセリフは、英語と韓国語と日本語とを「こういう風に書き分けてあって、それをあんなに完璧にやっているんだな」って読んでほしいですね。これを渡された役者さんたちがどんだけ頑張るとああなるのかが、シナリオ本を読むことで分かると思うので。そういう想像を膨らませるような読み方なら、スタッフ・キャスト以外の人が読んでも楽しいですよね。僕らもチェーホフやシェイクスピアの戯曲をありがたがって読むけど、シナリオってもっと一般の人が読んでもいいものなんじゃないかなと思っていたので、僕はずっと、出版するならノベライズじゃなくてシナリオ本にこだわってるんですよね。楽譜を読むみたいに「これをあの役者さん=演奏者がやると、こうなるのか」って読んでもらえれば。きっと役者ってすごいんだな、とかいろんなことを考えられるんじゃないかと思います。
◆取材・文=magbug
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