「“似た者夫婦だな”とほほ笑ましい気持ちに」
――早乙女家の面々もとても個性的です。秋生が鍛えているシーンや、麗美がフラメンコを踊るシーンなど要所にコミカルな演出がありますが、何か狙いはありますか?
アメリカのドラマや映画なんかがそうですが、悪役のお金持ちってちょっとネジが外れていて癖の強い感じがありますよね。それを演出したかったんです。社長という立場的に秋生はとにかくマッチョがいいし、麗美に関しては「この人にはどう考えても勝てない…」といった圧倒的に癖の強いキャラクターにしたくて。平山さんは元々鍛えていらっしゃる方でしたし、筒井さんはフラメンコを踊れると言ってくださったので、その案を採用しました。
また、お二人は演じながら「お前がそうくるんだったら俺はこうする」「それだったら私も」と、どんどん勝手に盛り上がっていくんですよ(笑)。設定では悪役ですが、“似た者夫婦だな”とほほ笑ましい気持ちになります。
――長妻怜央さん演じる伊志嶺和也は暴露系配信者・Mr.サルベージとしても暗躍し、現代のネットリテラシーへ警鐘を鳴らすキーパーソンであるようにも感じます。この役の注目ポイントを教えてください。
確かに、今の時代を一番切り取っている役だと思います。今作は、いつの時代でも通用するものすごく根本的な復讐劇ではあるのですが、このMr.サルベージというキャラクターに関しては、今だからこそどうしても入れたかったという思いがあります。イケメン俳優の裏にパトロン的な女性がいて、そこに深い闇がある。時代をちゃんと切り取りながらも、そういった闇を描くことは、今このドラマをやる意味としても一番大きな役割だと思います。
また、この役を長妻さんにお願いして正解だったと思ったのは、ご本人がすごく明るく天真爛漫で少しもあざとさがない方だったので、設定をさらに深くする必要があったことでした。麗美さんとも本当はもっと打算的な関係にする予定だったのですが、ご本人があまりにもそういう人じゃないから、ここにもう一つ何か設定を乗せた方がいいだろうと話を変更しました。これは、結果的に長妻さんだから叶ったことです。
板谷由夏が思わずブチギレ!?「泣きたいのは私!」
――撮影現場の裏話や面白エピソードがあればお聞かせください。
僕、第5話の、航輔がソファの下に挟まって一葉が秋生に迫られているのを見ているシーンがすごく好きで。秋生が部屋を出ていった後、航輔がやっとソファの下から出てきて一葉と見つめ合う瞬間があるのですが、航輔がそこで涙を流したんですね。僕は、それは本当に純粋な気持ちだったのだろうと、すごく共感できたんです。
ですが、カットがかかった瞬間に板谷さんがブチギレてるんですよ(笑)。「泣きたいのは私!」って(笑)。そこにいた女性スタッフもみんな「なんでお前が泣くんだ!」となっていて。僕は山中さんの気持ちがすごく分かるから、二人して女性陣にすごく詰められまして…。なので、あのシーンの一葉の表情は、「何お前が泣いてんねん!」っていう顔です(笑)。
――ミステリー要素を演出するために特にこだわっているポイントはどこですか?
今回、城定秀夫監督と一緒にやっていますが、基本的には「なんか怪しいぞ…」と予感させないように、あざとく見せないようにしています。昨今の考察ブームには反する形なのですが、「ここが考察ポイントですよ」というのを見せれば見せるほどあざとくなる気がしていて。これはやっぱり、TVerですぐに見返せるようになった影響もあると思います。
これまでの地上波だとリアルタイムの1回勝負なので、ミステリーだと特に、例えばSE(効果音)をつけるなど、多少あざとくせざるを得なかったと思うんですね。でも今作ではそういうのは極力減らして、まず人間ドラマを大前提として見せて、その中にミステリー要素が入っているという順番にしています。なので、“ミステリー要素にこだわりすぎていない”のがこだわりポイントです。
――主題歌にあえて洋楽(オリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」)を採用したのにはどんな狙いがありますか?
自分の中に、「日本にはこんなオリジナルドラマがあるんだぞ」と、日本代表として作っている意識があって。なので、少しでも海外の方に触れてもらうきっかけを増やしたいという思いがまずあります。また、「ヴァンパイア」は失恋の曲ですが、あくまでも嫉妬心のような心理描写がメロディーとして伝わればいいというところで、採用しています。
――最後に、最終回に向けた見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。
女子高生が亡くなった死の真相を暴く話ではあるのですが、根本には復讐を遂げようとする新堂家の絆や葛藤があり、早乙女家の中にも複雑なドラマがあります。それぞれが最終的にどのような家族の形を見つけるのか、ぜひ見届けていただきたいと思います。
▼過去の“ブラック”シリーズをTVerで配信中▼
『ブラックリベンジ』
https://tver.jp/series/srtyezf1te
『ブラックスキャンダル』
https://tver.jp/series/sr33qkp5kz