「どういう道を歩むのか、見届けていただけたら」
――第1話放送前から主人公・南雲が抱える秘密というのが一つの軸でしたが、なぜここまで大きな秘密を抱える主人公にしたのでしょうか?
新井:野球ものに限らず、学園ドラマって先生側の物語ってあまりないじゃないですか。1話ずつ、今週はこの生徒の話、次はこの生徒と描かれることが多いと思うんです。
今作を作るにあたり、先生の教員免許がないという設定は元々なかったのですが、全10話の中で南雲をどうやって成長させるか悩んでいたときに、教員免許を持っていなかったというニュースを偶然見かけて。
「下剋上球児」という作品名ですが下剋上するのは球児だけなのか、というと主人公はあくまで先生なのでそれだけだと違うなと。先生も下剋上するというストーリーにするために、今回の設定にたどり着きました。
――数々のヒット作を共に作り上げてきたお二人ですが、作品を作る上での“共通意識”はありますか?
新井:特にないような気がしていますが…強いて言うなら劇的なことが起きないようにしています。
奥寺:そうかもしれませんね。結果的に今回はドラマっぽくはなっているような気もしますが(笑)。
新井:(笑)。でも、あくまで“そんなこと現実で起こらないよね?”という展開にはしたくなくて。
奥寺:現実でもありそうだけれどドラマとしてもちゃんと見てもらえる、その絶妙なラインを探っています。
――新井プロデューサーから見た、奥寺さんの書く脚本の魅力はどういった部分でしょうか?
新井:やっぱりせりふが素晴らしいなと思います。塚原監督も取材の中で言っていたと思うのですが“優しい”という表現がぴったりで。何気ない一言がグッとくるというか…一方で、演出がとても難しいんですよね。
その一言の意味というのがスッと入ってくるからこそ、その言葉がどこにかかっているのかというのを読み解かないといけなくて。
奥寺:これからはもっと分かりやすく書くようにしますね(笑)。
――最終話に向けてメッセージや見どころをお願いします。
奥寺:見どころは、南雲自身も高校時代に決勝戦で負けるという苦い思い出もある中で、生徒たちや山住先生にチャンスをもらって決勝の舞台に挑む、というところでしょうか。
新井:野球のその先にあるものは何なのか、ぜひ見ていただきたいです。
奥寺:勝ち負けだけじゃないですよね。
新井:勝ち負けはさておき、試合中のやり取りだったり、その中で生まれる感情があって…勝っても、負けても、終わりは来るので。大会が終わった後、南雲を含めた彼ら、彼女たちがどういう道を歩むのか、見届けていただけたらと思います。
※このドラマは「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘 著)にインスピレーションを受け企画されたが、登場する人物・学校・団体名・あらすじはすべてフィクションです。