映像美も魅力
そんな「マイ・エレメント」の魅力は、何と言っても圧倒的な映像美。舞台となるエレメント・シティはカラフルでにぎやか。火のエレメントの炎の揺らぎとそれによって生じる周囲の明るさの変化、水のエレメントの半透明な体の精密で繊細な作り込み、土や風も実際の“自然”に近い表現になっていて、そのクオリティーの高さは大きな魅力と言える。
もちろん映像だけでなく、さまざまなメッセージが込められたストーリーも魅力的だ。違うエレメントの2人が出会い、引かれ合うが、周囲は2人のことを認めようとしない。現実では多様性を尊重する世界になりつつあるが、それでも無意識のうちに自分の中の価値観が正しいというか、当たり前だと思ってしまっていて、知らず知らずのうちに配慮の欠ける言動を起こしてしまっているかもしれない。恋愛の素晴らしさだけでなく、そういうことにも気付かせてくれるところがこの作品の良さだと感じる。
短編作品「マイセルフ」でも多様性への意識
ピクサーはこういった多様性への意識や自身と向き合うことの大切さなど、問題提起している作品が多く、短編シリーズの「SPARKSHORTS」にも顕著に表れている。配信されたばかりの最新作「マイセルフ」という作品は、木製人形の子が、金色に輝く周囲の者たちになじめず、星に願いをかけて自分探しをするという物語。その願いが届いたのか、金に輝く左手を見つけたのをきっかけに、両足、両腕、胴体と順番にゴールドのパーツを手に入れ、変わっていくのだが…。得たものがあるのと同時に、失ったものにも気付かされる。わずか6分ほどのショート作品だが、気付きがあり、考えさせられることも多い。
果たして「マイ・エレメント」は受賞することができるのか。恋愛など普遍的なテーマと多様性の尊重という現代的なテーマが盛り込まれた作品の評価が気になるところだ。
映画「マイ・エレメント」は、ディズニープラスで見放題独占配信中。
◆文=田中隆信
https://www.disneyplus.com/ja-jp/movies/elemental/
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発売日: 2023/11/15