世界と近くなったことは嬉しい半面、とても厳しい。
Prime Videoによって全世界に配信される本作。夢は大きく広がる一方で大沢は「世界の作品と同じ土俵で戦わなければいけない。それは映画に限ったことではなく、個人のYouTubeなどありとあらゆるコンテンツが溢れているので熾烈な競争になる。多様性がとてつもなく広がっていくなか選択肢も非常に多い。そのなかで選んでもらえるというのは、並大抵のことではないんですよね。世界と近くなったことは嬉しい半面、とても厳しい。世界中の優れた才能と勝負しなければいけない」と競争の激化を勝ち抜いていかなければいけないと実感しているという。
そんななか、大切なのは「作り手の思い」と「一点突破できる作品の強さ」だと大沢は力説する。「突然素晴らしい才能が出てくるのもネット社会。以前は観てもらえなかったものが、何かのタイミングで目に触れて跳ね上がることもある。俳優に関しても、以前は事務所に入らなければ作品に出ることなんてままならなかったのですが、いまはフリーランスの俳優でも芝居はできるんです。作品が人の目に触れて評価されれば、一気に夢が実現できてしまう。だからこそ『なぜこれをやるのか』が重要になるんです」。
また若年層から素晴らしいものを目にする機会が以前よりも格段に上がったという。「僕は父親が結構寛容で、小学生時代にみんながテレビを観ているなか、ハリウッド映画をたくさん映画館で観させてもらったんです。無意識のうちにいろいろなことを学べたのが財産でした。でもいまはInstagramを開けば、いろいろな手法の写真を勉強できるし、映像だってそう。小さいころから本物に触れているから、若い人たちの才能は驚くべきものがある」。
その意味で、本作も「若い人がこの作品を観て『こんな映像作品があるんだ。作ってみたい』とか『こんな俳優になってみたい』と思ってもらえたら、とても嬉しいですよね」と大沢は未来に目を向ける。作品を通して、新しい才能に刺激を与え、あらたな文化を作っていく……。さらに「とてもテーマ性のある作品なので、自分事として思いを馳せてもらえたら最高ですよね」と作品に込めた思いを語っていた。
◆取材・文=磯部正和
◆ST・黒田領
◆HM・松本あきお(beautiful ambition)