編集者から聞いた3つのポイントを軸に映像化
――本作を実写ドラマ化する上で特に気を付けていることを教えてください。
田中P:出版社の方はもちろん、プロットを作っていく中で原作者の板倉さんともお会いしてお話をさせていただいたときに、映像化する上でドラマチックじゃない物語の“ささやかさ”と言いますか、その“ささやかさ”のトーンは丁寧にすくい上げていかなければいけないなと思いました。
この作品でフォーカスされているのは、それぞれが抱える悩みのささやかさだったり、一歩踏み出すことができない、ささやかな感情の揺れなので、それを丁寧に描くべく気を付けています。
――事前の打ち合わせ段階で印象に残っていることはありますか?
田中P:板倉さんにお会いする前段階で、作品を映像化したいとご提案しに行った際に、編集者の方が「この連載を先生と作っていくときに3つのポイントを大切にしてきたんです。気まずさと、自己嫌悪、そしてささやかな救い。この3つを丁寧に描くように気を付けてきました」と教えてくださったんです。
それを聞いたときに“なるほどな、たしかにその3つがしっかり描かれているな”と納得感があって。なので、編集者の方から聞いた、この3つのワードがとても印象に残っていますし、実写化をする上でも、この3つのポイントは外さずに脚本作りを行いました。
――まい子を演じる久住さんのキャスティング理由を教えてください。
田中P:まい子ってすごく難しくて。原作で描かれているまい子は本当に普通の女の子なんです。ですが、それを映像化するときにただ普通の女の子というだけじゃない、華みたいなものは大切にしたいと思っていたのですが、久住さんはそのバランスを上手に体現してくれたなと感じています。
彼女自身が持ち合わせているオーラの部分もありつつ、ふとした瞬間に素の表情を見せてくれる魅力があり、久住さんにまい子をお願いさせていただきました。
――実際に久住さんがまい子を演じてみての印象や、どのように役と向き合われていたかお聞かせください。
岩上貴則プロデューサー(以下、岩上P):久住さんご自身が持っている、人の良さみたいなものはすごくまい子と重なる部分があって。そういった部分を生かしながら、コンプレックスを持っていることによって、内面的に彼女が傷ついているということは原作でもモノローグなどで描かれているので、せりふのないところの表情を意識して、話し合いながら演じてくださっていた印象です。
田中P:久住さんご本人はすごくナチュラルというか、自然体なんです。役作りをするときも変に作り込むことはなく、フラットにいらしてくださるので、まい子を作り上げる上で助けられたなと思います。
岩上P:久住さんっていい意味で媚びが一切なく、純粋に良い人なんです。先輩たちにもかわいがられていて、それに対して下心やあざとさがないところが、いい方向に出たなと思います。久住さんがいるだけで現場がカラッと明るくなるんです。