引退を決めたスズ子とほぼ1話を費やして語り合った第125回の長い対話シーンでも、引退に反対した理由を「僕は、まだまだ君と楽しみたかった」と振り返り、「福来くん、今まで僕を楽しませてくれて、本当にありがとう」「もう一度だけ、こんな僕と遊んでくれないか。最後にもう一度、お客さんの前で歌って思いっきり楽しく終わろうじゃないか」と引退コンサートを提案。どこまでも「楽しむ」ことを大切にする羽鳥らしさが随所に覗いた。
最終回、コンサートの「東京ブギウギ」歌唱シーンではスズ子の歌声に加え、おなじみの羽鳥による「トゥリー、トゥ、ワン、ゼロ!」の掛け声もホールに響き、ニヤリとした視聴者も多かっただろう。
視聴者が羽鳥善一に感じた“ズキズキワクワク”の正体は
徹頭徹尾、「楽しむ」ことを何よりも大切にする姿勢が印象的だった羽鳥。視聴者がその姿に“ズキズキワクワク”したのも、演じる草なぎ自身が羽鳥という人物を楽しんで演じていたからこそだろう。その姿勢は、クランクアップでの「羽鳥善一という役を通して遊ばせてもらいました。最高でした!」というコメントにも現れている。
草なぎ剛という俳優の魅力は、この“まずは自分が楽しむ”という姿勢にあるように思う。「月刊ザテレビジョン」で連載していた「お気楽大好き!」(2023年11月号)でも、「ブギウギ」撮影エピソードについて「趣里ちゃんとのシーンがたくさんあって、いつもケラケラ笑っていますね。こんなに楽しんじゃって大丈夫かな?っていうくらい」と語っていた。草なぎが羽鳥という人物を演じながら感じていた「楽しい」気持ち、高揚感がそのまま視聴者に伝播し、それが羽鳥善一というキャラクターから感じる“ズキズキワクワク”の源泉になっていたのではないか。
ヒロイン・趣里の名を一躍全国区に広めただけでなく、草なぎにとっても間違いなく代表作リストの一つに加わった「ブギウギ」。数々のヒット作、受賞歴を持つ草なぎだが、この作品であらためて、その魅力をお茶の間に知らしめた。スズ子&羽鳥のコンビのやり取りがもう見られないのは寂しいが、楽しんで役に没頭する姿勢がある限り、草なぎの代表作はこれからも生み出されていくことだろう。なお「ブギウギ」は現在、NHKプラス・NHKオンデマンドで視聴可能だ。
※草なぎ剛のなぎは、「弓へんに前の旧字体その下に刀」が正式表記