長谷川博己主演の日曜劇場「アンチヒーロー」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)が現在放送中。長谷川が演じるのは、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士・明墨正樹。「弁護士ドラマ」という枠組みを超え、視聴者に“正義とは果たして何なのか?”“世の中の悪とされていることは、本当に悪いことなのか?”を問い掛ける、前代未聞の逆転パラドックスエンターテイメントとなっている。
そんな明墨に憧れ明墨法律事務所へと入所したのが、北村匠海演じる赤峰柊斗。明墨の「犯罪者を無罪にする」というやり方を一度は拒絶したものの、「私は私の道を突き進む」という明墨の下で学び、見極めていくことを決意。
「正義とは何なのか?」という問いに揺れ動く赤峰だが、演じる北村は今何を思うのか。撮影で感じている思いや信頼を寄せる作品の魅力、今後の展望などを聞いた。
反響を分析「全員が怪しまれている段階なのかな」
――これまでの放送を受けての反響はいかがですか?
「面白い」という反響が一番多いなと思います。「何が正義なのか」と考えてくれる方はもちろん、ストーリーの全貌が見え隠れしはじめたので、一体誰が本当に悪い人なのか、全員が怪しまれている段階なのかなと。僕としても、純粋にエンターテインメントとして楽しんでくださっている方がたくさんいて、とてもうれしいです。
――これまでの撮影で印象に残っていることは?
テレビドラマにしては珍しく、台本が最後のほうまで出来上がっている段階で撮影に入っているので、本作においてはその難しさを感じています。全体を通して感情を出すお芝居は意外と少なくて、事件の説明をするシーンが多いのが本作の特徴の一つ。
特に明墨法律事務所での撮影は、1日かけて全員でひたすら何かの説明芝居をしています。大変ではありますが、それをみんなで共有できている日々はとても愛おしいですね。
――NGが出ても和気あいあいとした雰囲気のようですね。
もうNGが出ても仕方ないんです(笑)。セリフそのものというより、視聴者の方々に分かりやすく説明することがとにかく難しくて…。覚えないといけない人名も多いので、「この人が何をやった人で…」という複雑な関係を説明しているうちに頭がこんがらがってしまうんです。
みんなが難しいと分かっているからこそ変な緊張感がなくて、誰かがセリフを間違えても笑い合える和やかな撮影現場。第1~3話は特に長谷川さんの難しいセリフが多くて苦戦されていたのですが、そこに対して少しずつ笑える空気感を作り出してくださって、それがその後全員の助けにもなりました。
――肩肘張らないような関係性を作ることができているんですね。
そうですね。それでいてシーンによっては「次は和やかな空気で撮るものじゃないな」という役者としての配慮が全体的に漂います。シリアスな法廷のシーンではそういうお互いの距離感もすごく大事なので、全員があうんの呼吸で臨めている感覚があります。
「明墨の独特な雰囲気は、長谷川さんだからこそ引き立つ」
――長谷川さんの芝居を間近で見て改めてどんなことを感じていますか?
僕なんかがとやかく言える立場ではありませんが、やっぱり迫力がすごいです。長谷川さんご自身は細いタイプだと思うのですが、赤峰として対峙(たいじ)する時はすごく芯が太いなと感じます。明墨の独特な雰囲気は、長谷川さんだからこそ引き立つのだろうなと。
役者はそれぞれのルーツによって演じ方が異なるのですが、長谷川さんのお芝居を間近で感じるととてもワクワクしますし、赤峰としても立ち向かうかいがありますね。
――ご自身の芝居に影響があったと感じる瞬間は?
表情、姿勢、歩き方などの技法はもちろん、ネクタイの玉の結び方など一つとっても、作品ごとに変えているので、具体的に何かというよりはそういった演技などへの姿勢を間近で感じられるのは良い刺激になります。
今回、弁護士ドラマだからなのか、撮影すればするほど全員の顔つきや目つきが鋭くなっているのを、モニターを通して感じています。特におでこの力の入り方などは、演じていても分かるもの。
これも長谷川さんが余裕のあるミステリアスな明墨を演じてくれるからこそです。えたいの知れないキャラクターと対峙しているからどんどん力が入っていく。みんな顔が釣り上がった状態でずっとお芝居しているので、すごく顔が痛いです(笑)。