――また、「大丈夫」は山村さんがDJをつとめるラジオ番組「Radio Fields」へリスナーから寄せられたメッセージを中心にして、山村さんとサウンドプロデューサーの多保孝一さんがタッグを組んで制作されたそうですね。この曲が生まれるキッカケについて簡単にご説明していただけますか?
山村「仲の良いDJさんから『コロナ禍でいろんなメッセージを集めているなら、ミュージシャンだし、曲にしてみたら?』というアドバイスをもらったんですよ。そこで、以前にも協力してもらった多保さんと一緒に曲作りをすることにし、せっかくだから歌詞はリスナーと一緒に作ろう、となって」
――寄せられたメッセージはどういったことが多かったんですか?
山村「一番多かったのは『大丈夫という言葉を入れてください』ということでした。あとは、『自分らしく』というのも多くて、自分らしさを見失いがちなのかなと感じたり。人と会えないというのは、自分を見つめることになるのかなと思ってたんですけど、意外と人と出会ったことで自分らしさに気づくこともあるわけで」
――たしかに、他者との違いから自分を見出したりもしますからね。
山村「社会にいる自分自身を俯瞰で見て『自分ってこういう人なんだな』って捉えてるとしたら、それが失われたとき、自分らしさみたいなのを失っちゃうというか。この曲の制作をキッカケにして、人との関係の大事さを考えさせられました」
――クライマックスでは山村さんの教育実習時代の恩師が現在勤務する中学校の3年生の有志やラジオ番組のリスナーの声も入っていますよね。
山村「中3だと進路に直面してて。(コロナ禍で)立ち止まらないといけないけど、進む準備もしなきゃいけないという、たいへんな状況じゃないですか。明るいニュースというわけじゃないけど、今は合唱の授業もないし、距離をとってマスク越しではありつつも、一緒に声を合わせる機会を大人が作るべきなんじゃないかなって」
――非常に素晴らしいアイデアだったと思います。
山村「それにこの『大丈夫』という曲が、まさにそういう声を合わせることの安心感を歌った曲だったので、特に青春を奪われている中学生にそういう時間を設けられたらな、と。恩師に相談して、関係する方々も温かく協力してきただき、ありがたかったです」
――コロナ禍において、アーティストと共にいろんな声が混じり合うモノを聴くことがないじゃないですか。それもあって、すごく温かい気持ちにもなりました。
山村「それはライブでも感じてることですね。(ファンの)声がないっていうのは、ライブの醍醐味として大きな柱を失ってる。そこがなくなったとき、物足りなさを感じましたからね。声を出しに行く、合わせるというのもライブへ行く目的としてあるじゃないですか。非日常の中で発散するっていう。ただ、コロナが開けたときの楽しみが増えてるという意味では、そこに気付けたのはいいことだったと思ってますね」
――加えて、flumpoolからファンに呼びかけるような、寄り添う曲にもなっているなと感じたんです。
山村「あぁ、そうですね。どんなことがあっても音楽で寄り添うことはできるし。どういう状況でも、ひとりじゃなかったら乗り越えていけるというのはバンドのテーマでもあるんで、そこが伝わると嬉しいですね」
――しかしながら、それぞれキャラクターの違う3曲が収録された興味深い作品になったと思います。
山村「自分らでもそんな気がしてるんで、そう改めて言われると「そうなんだな」と実感します」
阪井「たしかに全然色が違うし、3種類のflumpoolが聴けるっていう意味でも手にとって欲しいですね」
――今後の展開として、「ディスタンス」のようなアプローチは増えていくんでしょうか?
阪井「あるかもしれないですね、この先も。ただ、やりたいことはいっぱいあるんですよ。『ディスタンス』みたいな打ち込みサウンドは世界的なトレンドでもありますけど、またバンドサウンドに流れが戻ってきてる気もするから、今度はそういう方向性で面白いモノを作れたなら、と考えたりもしてます。凝り固まることなく、いろんなことをしていきたいですね」
――漠然としたことでいいんですけど、何か構想があったりは?
阪井「例えば『君に届け』や『星に願いを』みたいな曲って、今じゃ書けないんですよ。年齢的なこともあるし、バンドを10何年もやってくると。だから、そのままやってみようとは思わないんですけど、今の30半ばの自分たちなりの『君に届け』みたいな曲を書くのは面白いんじゃないかとちょっと思ったりはしてますね。
山村「例えば、『ディスタンス』みたいにちょっと違う曲があれば、自分たちが培ってきたモノもあったり、ルーツミュージックみたいなところに戻ってみたり。どこかに偏ることなく、武器を増やしていければと思ってます」
「ディスタンス」
flumpool 1430円 エースケッチ
収録曲●ディスタンス/フリーズ/大丈夫
2008年にメジャーデビュー。以降、数々の映画やドラマの主題歌等も担当。現在「flumpool 10th
Tour『Real』」を開催中
公式HP
https://www.flumpool.jp/