奥野壮、体当たりの自主練で挑んだ“ニューヒーロー”は「いくつもの魅力がつまっている」<超速パラヒーロー ガンディーン>
奥野壮「スピードも出るので、怖かったです」
――車いすを自宅へ持ち帰り、練習されたと聞きました。実際に生活の中で車いすを使われてみていかがでしたか?
撮影に入る1カ月くらい前から、自宅でも車いすで生活をしていました。普段はできないことを、沢山経験させていただきました。
家の近所で車いすに乗っていたのですが、坂道は大変だな…と感じました。歩いていたらそこまで辛くない緩やかな坂なのに、一生懸命こいでも、ゆっくり進むだけで…。しんどいな、きついなと思いながら坂を上っていました。
あとは、トイレに座るときなど、車いすから乗り換えをするのが、どうしても足を使ってしまいそうになり、乗り換えるのがとても難しかったです。台所なども立っている人用の高さで、上のものを取ることができないこともありました。僕は今、兄と一緒に住んでいるのですが、人の手を借りなければいけない場面が多いなという印象でした。
――競技用の車いすにも挑戦されましたが、いかがでしたか?
とてもしんどかったです。日常生活で使われる車いすとは重さも違いますし、スピードも出るので、怖かったです。スピードに乗っている中で、減速せずにコーナーを回ることが難しかったですし、やってみないと分からないことがたくさんありました。
――選手の方々と一緒の訓練だったと聞きました。どのような訓練だったのでしょうか。
撮影に入る1カ月くらい前から、週に数回、2時間くらいの練習をしました。現役の選手たちに混じって、スタートやコーナリングなど、彼らが実際に行う練習をさせていただきました。
訓練がとても大変だっただけに、第一線で活躍されている選手の皆さんのすごさを改めて実感しました。ぼくが400mのトラックを1周するだけで息が切れているのに対して、皆さんは一回の練習で20km走るそうです。それを聞いたときに、「僕が1周で息が上がっているのに、彼らはこれを50周するんだ…」と、この膨大な差に驚愕しました。
――選手の方々から、何かアドバイスなどはありましたか?
パラ陸上の所作についてはいくつもアドバイスいただきましたし、スポーツをする上でのアドバイスや、こうしたら速くなるよというアドバイスもいただきました。
ですが、話をするというよりは、練習していらっしゃる姿をずっと見ていました。言葉での会話は少なかったかもしれませんが、練習するアスリートの方たちのすごさを間近で見ることができたのは、僕自身のモチベーションにつながりましたし、もっと頑張らないといけないなという気持ちになりました。
――体にも変化は現れましたか?
撮影に入る前から体作りをしていたこともあって、結果的に5~6kgくらい体重が増えました。車いす陸上のための筋トレだったので、普段使わないような筋肉がどんどんついていき、上半身のありとあらゆる部分が育っていくのを実感していました。